<小型バイクでツーリング>北海道一周沿岸ツーリング記

<小型バイクでツーリング>北海道一周沿岸ツーリング記

<小型バイクでツーリング>北海道一周沿岸ツーリング記

赤いクロスカブ(110㏄)に乗って残暑の関東を脱出し真夏の北海道へ!バイク歴1年半の初心者ライダー(♀45歳)が、北海道沿岸ルート約3,000キロを2週間かけてのんびり走ってきました。
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<15日目>襟裳岬→様似~瞬間風速30メートルの襟裳岬でクロスカブ動けず・・・

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人生の中で「やばい・・・ホントやばい!」と恐怖感じたベスト5に入る体験をしたのが襟裳岬。

朝起きたら「台風でもここまでは・・・」という暴風雨。その前日は本州全体が大気不安定で、神奈川でも竜巻が発生していた日だ。

襟裳岬在住の方のブログによると、稀な荒天だったとのこと。

気象庁のアメダスの観測値、10:30に最大風速31.1m/s この時期としては稀の暴風でした。 バイクは転倒し、自転車の方は路肩で動けず。 北東の風(通称ヤマセ)は風の強弱の変動が激しいので二輪車は大変でした! 幸いにも怪我をされた方や走行不能になった方は居なかったようでなによりです。 ●昨日の襟裳岬は久しぶりに荒れた天気だった❗️ - 北海道のしっぽ

▼北海道一周ツーリング<15日目>襟裳岬→様似町(2分18秒)

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襟裳岬を含む道南は大雨。
でも雨以上に問題なのが、いまだかつて体験したことがない暴風。

駐車場に停めてあるバイクが倒れないよう移動させたかったが、そのために玄関から出ていくことすら躊躇われるほどだった。

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それでもチェックアウト時間の頃には雨はあがった。同じ民宿に泊まっていたライダー数名のうち、最初に勇敢にも出発したのは50ccスクーター女性だった。

夜の苫小牧発フェリーに乗らないといけないので、時間的余裕があまりなかったのだ。それにしてもこれで北海道まわってるって凄すぎる。

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元ユースホステルならではの見送り。

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私はもう一泊して翌日苫小牧に向かうという方法もあったが、万が一翌日も暴風続きだった場合、時間的に追い詰められて走ることになり、それは避けたい。

少しでも風抵抗を減らそうと、マットを半分の高さにし荷物極力箱の中に詰め込んでみた。

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出発は見送ることにした大型バイクのベテランライダーさん。私のこともとても心配してくれた。

「あんたのバイクじゃすぐ倒されるぞ。気を付けて!」

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それまで横殴りで振っていた雨が嘘のようにあがり、青空が広がっていた。

が!!!

風は全く弱まらず。
写真では伝わらないと思うが半端ない強風が東側から、つまり左側から吹き付けていた。

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その風は襟裳岬の先端に近づくにつれどんどん強まり、走っていてもどんどん右に寄ってしまう。このままだとセンターライン越えちゃって、対向車来たらやばいぞ。

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そう心配になり、いったん路肩によって停車。
水平線までびっしり白波。

前日も同じ場所を走っているけど、こんな強風になるとは想像もしなかった。

ただこの時は、スタンドも使わずバイクを路肩に普通に停車できていただけ全然ましだった。

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いったん襟裳岬の駐車場に一度入ることにした。

ただ入ってびっくり。
風、半端ない。

重心低い大型バイクすら煽られてふらつき、どこが安全な停車場所か必死に目で探している状態だった。動けなくなり他のライダーの手を借りて移動している人もいた。

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仲間発見!
この風は洒落にならないね・・・と。

確かに。

停車しても風で倒されてしまう危険性があり、とても岬の散策コースに向かえる状態ではなかった。

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早くここを脱出しよう。

そう思って駐車場から道にでようと左折のためスピードを落とした時、突如右側から殴りかかってきた強風。

慌てて足を付くも、足一本で耐えられる風ではなかった。

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転倒。
風に押し倒された形だ。

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道は、襟裳岬の駐車場手前でUの字を描いている。
そのため、風の通り道になっていたようだ。

立っているだけでも大変、バイクを起こそうとしたが風が強すぎ、必死に力をかけ数センチ持ち上げてもすぐ押し返されてしまう。

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その姿を見ていた男性が、助けにきてくれた。

「ここで発進するのは無理だから、とりあえず駐車場に戻ろう」

そう言ってバイクを押して運んでくれた。
風強すぎて、バイクを起こすのも運ぶのもひとりでは全く無理だったので本当に助かった。

しかし押して運んでいる最中、バイクから聞こえてくる嫌な音。

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「これ・・・チェーン外れちゃってるかもよ」

がーん。

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バイクチェーンどころか自転車のチェーンを直したこともない。
ただ他に方法もないので、チェーン部分を覆っているカバーを外すことにした。

Amazonで買った200円台の激安携帯工具の出番だ!

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カバーは簡単に取り外すことができ、でろんと垂れ下がるチェーンを確認。

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雨天用に持ってきた耐油ビニール手袋も役立った。チェーンも無事はめなおせた。緩み的にも許容範囲内かなと。

ただ風で転倒した精神的ショックは大きく、すぐ再挑戦する勇気がでなかったので、気分転換とエネルギーチャージのためレストランに入り昼食をとった。

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その後もバイクは次々入ってきて、風が最も弱い建物かげに並んだ。大型バイクの人も「この風は怖い・・・」と、出発を躊躇している。荷物積載を変えている人などもいた。

風は全く収まらない。
このまま駐車場にいてもどうしようもないので、今度は安全な場所までバイクを押していくことにした。

それなら大丈夫だろう。

・・・と思ったのが大きな間違い。
やはり駐車場を出たところで、暴風の塊に襲われ、一歩も動けなくなってしまった。

感覚としては太い木が一本、バイクと自分の体に右側から倒れ掛かっている状態。力ふり絞って車体を起こし、サイドスタンドを出したが、それでもバイクが風で強く押され、タイヤが浮かび上がりそうになるほど。

それを必死に押し付け耐える自分。

前にも後ろにも動けない。
ましてやUターンして駐車場に戻るなんてことは無理。

10分以上その姿勢で耐えていただろうか。
やはり駐車場内にいた男性がレスキューしてくれた。

「大丈夫ですか?」
「ぜんぜん・・・大丈夫じゃないです・・・やばいです・・・ありがとうございます・・・」

そして再び駐車場に。

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再びレストランに入り、気分鎮めるためのコーヒー。

押してもダメだし、まして走って抜けるなんて小型バイクとスキルがない自分には無理。
風が収まるのを待つしかないか。

そう思ってコーヒー一杯で一時間近く粘ったが、風が収まる様子はない。レストランの人に聞いても「今日はずっとこのままかもなあ」とのこと。

ネットで調べると襟裳岬の10分間平均風速は20メートル以上。
瞬間風速は30メートルを越えていたようだ。

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正直、バイクまたぐことすら恐怖感じるほどになっていたが、いつまでも足踏みしているわけにもいかない。他のバイクの走り方などを見てイメトレし、折れかけているココロを奮い立たせ、三度目の挑戦をすることにした。

風が一番強いのはおそらく駐車場でてすぐのところ。
駐車場内でスピードをあげ、出口は停まらず、右寄りで一気に抜ける。
バイクごと風上に傾けた姿勢をとる。
やばいと思っても停まらずスピード落とさず、バランスで何とかすること。
停まったらすぐ倒されるし、風が一番強いところで転倒したら自力では起こせなくなる。

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そして、強風に煽られる恐怖に耐え、難所だった駐車場出口はなんとか抜けることができた。
ただその後もずっと右からの風に押され続け、ハンドルを持ってかれそうになる。

バイクと身体傾けようとしても、風の力のほうが強すぎうまくいかず。

左の路肩にぐんぐん押されるのだが、そこで倒れたらバイクは草むらの窪みに落ちてしまう。絶対ここで風に負けるわけにはいかない。

もー必死!

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そして最大の難関が訪れた。
写真に写っている左右のちょっと丘になっているのが切れたあたり。

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駐車場出口と同じように、ここだけ左右に海が見え遮るものが何もない状態になっていた。風というより、濁流の大河を横断しているようだった。

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真っすぐ走っていたと思うのだが、バイクごと左に横滑りする感触の後、太いワイヤー製のガードレールに激突。

一般道で、そこそこスピード出して走行している最中に転倒したのはこれが最初。身体も痛いがそれ以上に精神的ショックが大きかった。

バイク起こして足を抜こうとするも、前車輪がガードレールの下に突っ込んでしまっていて動かずしばらくもがいた。

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駐車場からは既にかなり走っている。

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そして先もまだある。
おそらくカーブの先は少し丘の影になっていると思うんだけど、そこまでの距離、押して移動するのも厳しい強風だ。

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なんとか前車輪はガードレールから抜き出すことができた。
しかし風強すぎてやはり起こせない。

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途方に暮れていたところ、一台のワゴン車がやってきて停まってくれた。中からは数人の男性。

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あっという間に起こしてくれた。

「でもこの後どうします、サイドスタンドしても、この風じゃ倒されるでしょ」
「ガードレールに寄りかからせておくので大丈夫です」

押して運ぶのを手伝おうかと言ってくれたんだけど、お願いしてしまうと、どこまで手を貸して引き上げればいいか見極めつけにくくなる気もした。そうして長時間拘束してしまっては申し訳なさすぎる。

「風がもう少し落ち着くまで様子見ます」

そう辞退した。

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心配そうな様子を見せながら車に戻る5人。
本当に助かったしありがたかった。

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再び身動きできなくなったクロスカブ。
ガードレールから数センチ離すだけでも腕がぴくぴくするほどの筋力を使う。

人が立っているだけでも体力消耗するほど。このまま風に晒され続けると危険かも。最悪どうしようもなかったら、バイクはロープでガードレールに固定し、自分だけ歩いて離脱するか。

そう考え、状況と携帯電話番号を書いてバイクのシートに貼るための養生テープも取り出した。

その後、10人以上の自転車がやってきた。大学生っぽいグループだ。やはり同じ場所で強風にあおられ、何人もガードレールにぶつかっていた。

それでも必死に漕いで難所を抜けてゆく。
若いってすごい!

頑張って!親指を立てて声援を送った。
身動きできなくなってるライダーおばさんに応援されても戸惑うだけだったかもしれないけど。

ただ彼らの奮闘に力が湧いてきた。
怖気づいてちゃ負けだ。クロスカブだってやれるはず!

ガードレールとバイクの間に体をねじこみ、ガードレールで自分を支えながらじりじ一歩ずつ押して前進した。

ガードレールの切れ目でしばし風が弱まるのを待ち、そこから反対側に移動した。

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というのも、実はチェーンが外れてしまっていたのだ。転倒した場所ではセンタースタンド立てられなかったのと、修理中に別のバイクに突っ込まれる危険性もあったので、丘の影で作業をした。

今回は二度目なのでさっくり。

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そして風が少し弱まったタイミングで四度目の挑戦。

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危険ゾーンを抜けた時は、涙がでそうなほど感激した。

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市街地まで降りてきて、ここでバックミラーを応急治療。ガードレールにぶつかったクロスカブもちょっと怪我をしていたが、特に大きな問題はなかった。

グローブはちょっと破けていたが、プロテクターもしていたので私自身も怪我は一切なし。ただ筋肉使い過ぎて全身ぷるぷるしていた。

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その後も風は強く何度かバランス崩しそうにはなったが、押し倒される風を経験した後なので問題なし。恐怖感もなくなった。

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襟裳岬へ向かうバイクとすれ違う時には、「強風で大変ですよ」と伝えたい気持ちでいっぱいに。

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さきほどの若い自転車の一群にもトンネル前で再会した。笑顔でVサイン送ってくれる子。きっと心配してくれていたのだろう。

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海沿いというより「海の上」に作ったかのような道も多く、何回かバイクと一緒に波を浴びた。帰ったらバイクしっかり洗い流さないと。

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様似町で夕方を迎えたので、スマホで検索し、様似駅前にあるその名もずばり「駅前民宿」に泊まることにした。

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身体はまだ熱を帯びていた。
こんなに筋力使ったことはいまだかつてない。

自分へのねぎらいでプレモルとさんま蒲焼重。

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歯を磨きに部屋をでると、名前を書いた紙が挟まれていた。電話もせずいきなり飛び込みできた一泊だけの素泊まり客。でもちゃんと歓迎してもらっているんだなとうれしい気持ちになる。

シングル満室だったので断ろうかと思ったけど、私が疲れ切った様子だったので「うちで断ったら隣町までさらに走らないといけなくなる」と、4人以上泊まれる大部屋に入れてくれた。

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自分以外はすべてJR代行バスの運転手さんばかりなのだという。
ちょっとした社員寮的な場所なのだろう。

キッチンには、遅く帰ってきた人のためのカレー鍋とこんな書置きがあった。本当に暖かい宿だ。

北海道一周ツーリング最後の夜、
いろいろありすぎたけど、終わりよければすべてよし。

強風の中、見知らぬ私を助けてくれた多くの人たちに心から感謝。

▼北海道一周ツーリング<15日目>襟裳岬→様似町(2分18秒)