ある日ベランダに鳩が巣を作って卵を産んでいた
2012年6月26日
非常に強い勢力の台風が関東直撃した翌週、布団干そうとベランダに出た私の目に、小さな卵が一個飛び込んできた。真っ白で大きさはうずらほど。
「なぜここにこんなものが?」
きょとんとしながらサンダルを履きベランダに。
左手を見ると、三段の木棚に枯れたポトスの植木鉢が倒れ掛かっていた。台風のせいだろう。
ふと何かが動いた気がして木棚の下を覗きこみ仰天。
そこに鳩がいた。
何か月も私とバトルしていた奴だ。
今年頭からずっと、うちの換気扇の上の隙間に巣を作ろうとしつこく通っている鳩カップルがいた。何度も追い払い、換気扇の上にはアルミホイル+竹串で作ったお手製剣山まで設置した。フンがあるとまた寄ってくるという話を聞き、床もブラシでごしごし擦りきれいにした。
それでも執着し、気付くとベランダすぐ前の電線に二羽並んで止まり、じっとこちらをうかがっていた。どうやらその片割れのようだ。
「植木鉢が倒れたせいで、今度はそこを狙ってきたか!」
しかしいつもと違い、すぐに逃げない。
こちらをじっと睨み返してくる。
よく見ると、鳩の身体の下には小枝がたくさん。
巣だ!一体いつの間に!?
しばし睨みあった末、鳩は飛び去っていった。
しかし次は私が驚く番だった。
「うわっ、卵産みやがった!!!」
細い枝を集めてベランダ排水溝の上に作られた巣の真ん中には、つやっと輝く卵が一個。まだ親鳩のぬくもりが感じられた。
ベランダの床にあった卵は、産んだ後何らかの原因で巣から転がってしまったか親鳩が破棄したものなのだろう。
もー、動揺しまり。
いきなり彼女に「あなたの子ができたの」と言われた独身男性の気分。
しばらく立ちすくみ、どうすべきか悩んだ。
至近距離に人、しかも天敵がいるにもかかわらず、こちらをじっと見て卵を温め続けていた親鳩の必死の姿を思い出したら、とてもじゃないけど、巣を壊して卵を殺してしまうことなんかできなくなった。そもそも野鳥保護のため、卵・雛のいる野鳥の巣は、自分の敷地内であっても無許可で破壊することはNGだ。
そして決意した。
雛が巣立つまで見守ろう。
しかし近所迷惑になってはいけないので、フン害を防ぐべく手立てを打つ。
そして無事巣立ったら、今度こそ絶対に鳩に巣をつくられないよう、ベランダにある余計なものをすべて処分しようと。
翌日見ると、卵は2個に増えていた。
ネットで鳩の生態を調べると・・・
- 一年中発情期で繁殖する
- 通常3日のうちに2個の卵を産む
- 18日間抱卵して孵化
- 孵化直後は「ピジョンミルク」というミルクで育つ
- 40~50日で巣立ち
とのこと。
6月25~27日にかけて産卵したとすると、孵化は7月12日前後、そして巣立ちが8月21日過ぎだ。
せっかくなので子育風景を見てみようと思い立ち、ベランダに古いビデオカメラを設置し、Ustream中継を開始した。
背中部分が白っぽいグレーのツートンカラーの鳩が母鳩。
なぜ♀とわかったかというと、父鳩と交代して外の電線に止まった直後、別の♂鳩から求愛行動を受けていたから。
こちらが父鳩。
性格が母親より雑なのか、あるいは不器用なのか、交代をして巣に飛び降りる時、よく卵を踏みつけていた。母親のほうが何につけてもやることが細やかだった。
▼録画映像(2012年7月4日)
↑2分20秒あたりで、母鳩が戻ってきて抱卵再開する。首で卵を寄せ、体を揺らしながら卵2個を胸の間に格納する様子が見える。
1時間57分のところまで一気に進めると、姿勢を変えて卵を転がす様子も。
そして2時間00分の時、母鳩が突然飛び出し再び卵だけになる。そして1分後、父鳩がやってきてまた温めはじめる。
▼録画映像(2012年7月9日)
↑父親抱卵風景。最初卵しかないが、1分50秒あたりで戻ってきて抱卵開始する。
交代はいつも、お昼少し前(11時頃)に一回と、日没少し前頃に一回あった。恐らく自分が見ていない夜間・早朝にあと2回くらいあるのかもしれない。だとすると6時間交代といったところだろうか。その間、まったくエサも食べず水も飲まず。
ここは埼玉のかなり日中気温が高いエリアなので、喉乾いただろうなあ。
一度、ビデオカメラの赤外線撮影機能を使って夜間覗いたこともあるが、やはりじっと卵を温め続けていた。
そして初めて卵を見つけてから17日目の7月12日、鳩の様子が急変した・・・