【11日目】遂に能登半島!能登金剛に海沿いの集落、奥能登の絶景ロード
東尋坊で入手した「がけっぷち」Tシャツを早速着用。
日本海側は海沿いぎりぎりを走れる道が非常に多いのだが、同時にがけっぷちの道も非常に多い。沿岸ツーリングとしては理想環境だが、細いくねくね山道で左側がすぐ崖&海という箇所も少なくなく、スピード出やすい下りでは少々緊張もする。
まさに「がけっぷち」だ。
そして今日は能登半島に突入する。日本海沿岸ツーリングのちょうど中間地点あたりで、ここまではずっと東進だったが、能登を通過すると道は北向きに転じる。
能登は大学時代にサークル同期と旅行で訪れていた地なこともあり思い出もいっぱいだ。
ちなみにこのTシャツ、背中の大きな文字プリントに加え、胸元にも。
しばし走った後、進行方向の海の上にこんもり緑の島のようなものが見えたので、向かってみたところ、陸続きの場所だった。
しかもここも砂浜に車がたくさん突っ込んでいる!
もしやまた砂浜を走れる!?と、ちょっと恐々ではあるが進んでみると、砂浜は固められていてバイクでも問題なし。
こんな波打ち際までバイクで走ってこれるなんて、今までほとんど体験したことがない。それがこの2日間でたっぷり味わえている。
石川県には何か、砂浜を車で走る文化があるのだろうか。
それとも単に砂浜の砂の種類ゆえ?
いい写真も撮れた♪
(サイト運営者的には「何かのタイトル画像に使えそう」と)
ソロツーリングなので、誰かと話す機会は非常に少ないのだが、ガソリンスタンドでは店長さんなどが「(ナンバープレートの)香取ってどこ?」と話しかけてくれたりする。
無駄話で仕事の邪魔をしてはいけないが、小さな街のガソリンスタンドなんてそんなにひっきりなしに車の出入りがあるわけでもなく。ヘルメットに付けているアクションカメラの話、クロスカブのこと、ツーリングのルートなど、質問に答えながら会話ができるのは結構楽しい時間だ。
「気をつけてな~」
一期一会の相手だけど、そういって送り出してもらえるのもうれしい。
Googleマップのナビはより速く着く経路を指し示すので、そこそこスピード出せる幹線道路が中心になるが、そこから外れてなるべく海沿いを走ろうとすると、こんな道にも入り込む。他に走っている車やバイクもなく快適だ。
突っ込み過ぎると途中から驚くような急坂になってしまったり・・・
急坂の途中で通行止めにぶち当たってしまうこともあるが。
海の色もかなり変わってきている。
能登手前と比べると濃厚になっている。
本日のハイライトのひとつは「能登金剛」。
能登半島の付け根あたり西岸にある奇岩や断崖の景勝地。
中でもすごいのがこの洞窟。広い公園敷地内にぽっかり空いた穴から入り、ごつごつの岩肌のトンネルの中、手すり付きの階段を降りていくと(暗くてちょっと怖い)
たどり着くのは波押し寄せる海辺だ。
ギネスに登録された世界一長いベンチもある。実際は既に記録塗り替えられているようだが、それても実績的に元に「世界一」の呼称は使い続けているようだ。
お盆期間中のライトアップに向け、工事が進められていた。
身体が溶け出すんじゃないかという猛暑の中、日陰にバイクが停められると非常にうれしい。同様のライダーは多いので、建物から出てくるとまるでおしくら饅頭してるかのように、狭い日陰にバイクがぐちゃっと固まっていることもある程だ。
世界一長いベンチすぐ近くにある道の駅「とぎ海街道」の名物は男爵イモのソフトクリーム。
ソフトクリームには男爵いもが練りこまれており、さらにカウンターに置かれたサラサラの塩を自分で好きなだけふりかけていただく。
非常に細かい粒子の塩が勢いよく出てしまい「やばい、かけすぎたか?」と不安になったけど、一口食べてびっくり。
美味しい!!!
これからはマイ塩持ち歩いてソフトクリームに必須でかけちゃおうか。
醤油バージョンも。
妙に大きなかき餅も何種類か売られていた。食べ応えありそうだし、沿岸ツーリング中の非常食として買っておいても良かったかも。
能登半島に入ると、古い木造の家が隙間なく立ち並ぶ漁港近くの集落がちょこちょこと現れる。味わいある色に変色した細長い板がびっしりと並べられた外壁。
軒下にはたまねぎが干されている。
棚田風景も。
能登金剛と呼ばれる景勝地はかなり広いようで、ここ「ヤセの断崖」もその中のいちスポット。松本清張「ゼロの焦点」ロケ地でもある。
高校生の頃、母親の影響で松本清張にはまり、図書館に行っては借りて読んでいた。ゼロの焦点もおそらくその頃に読んでいる。ただ映画はまだ見ていない。
クライマックスの舞台がヤセの断崖だ。
今度映画見てみようかな。
「シナリオの書かれている間、私は独りで冬の能登半島をロケハンした。(中略)冬の能登半島を、殺人の舞台となる断崖を探して歩き廻った。十二月の能登の天候はまるで気違いの様で、横なぐりの突風や、パチンコ玉の様なアラレが降った。空が暗く、その一部がさけると、一条の光で、暗い海の一部が輝き、波が踊った。この時見た景色が「ゼロの焦点」を映画化する時の私のイメージの原点になった」
冬の日本海は一体どんななんだろう。
今回の沿岸ツーリングで私が見ている風景からは想像もつかない。
ツーリングマップルには「冬には波の花が国道まで吹き上げる」と書かれている。体験してみたいような怖いような。強風の中でも安全に走れるようにならないとダメだろうなあ。道凍結もありそうだし。
能登半島の外周の道の気持ちよさに「バイク最高!」とか思っていると、道端に突如現れる「トトロ岩」。近付くと思わず
「ちょっwww」
と吹き出す。
目を付けちゃうのは反則だろwww
なぜかここだけ赤い岩場が剥き出しの場所も。
よく見ると手前の岩場もこのあたりだけ赤い。
トンネルの名前は赤神トンネルで、その先には道の駅赤神もあった。
重要伝統的建造物群保存地区に指定されている天領黒島。
輪島市黒島地区伝統的建造物群保存地区は、日本海航路による海運業の発展の中で北前船の船主および船員(船頭や水主)の居住地として栄え、江戸後期から明治中期にかけて全盛を極めた集落です。
黒島から輪島までは、国道249号は海沿いではなく内陸をショートカットする。
なるべく海沿いの道をと思うとかなりくねくねの山道を進むことに。
舗装されている道だけど、林道和田線も走った。
距離的にもかなり伸びてしまうのだが、それでもやはりショートカットしなくてよかった。こんな集落の風景も見れたのだから。
集落のもっとも海寄りの家のところにはりめぐらされた「間垣」。
竹を切って並べ、さらに数本束ねて長くした竹の柱を横に渡して結わい板状にしたもの。
家の屋根までをすっぽり覆う、非常に背の高い塀だ。
竹の上部には細い枝がそのまま残っていて非常に面白い。
海沿いに作られた道は、右側がすぐ山の斜面に。
しばらく進むとまた間垣の集落があった。
旅館という看板も出ていたので、観光客も訪れているところのようだ。
高台から見下ろすとこんな感じ。
まるで防潮堤のように、間垣が集落と海の間に一列に張り巡らされているのがわかる。
もちろん高波を防ぐ効果は一切なく、風よけだ。
板でも石でもなく「竹」という素材を使っているのが非常に珍しい。
聞き慣れない「間垣」とは、長さ約3メートルのニガ竹という細い竹をびっしりと隙間なく並べてつくった垣根のこと。日本海から吹き付ける冬の風から家屋を守るためのもので、冬は暖かく、夏は陽射しを遮るためとても涼しいのだとか。奥能登の不思議な町並みは、厳しい自然と共存してきた先人たちの 生活の知恵がもたらしたものだったのです。
●間垣の里 | のとの風景 | 能登名所・観光ガイド | 多田屋 能登半島 和倉温泉 旅館
間垣がある大沢・上大沢集落から輪島までの間は、海沿いの道だ。
青い海がまぶしい!
下り道では視界のかなりの割合が真っ青となり、吸い込まれていくような気分を味わえる。
と、突如目の前に港が現れた。
輪島港だ。
あまりに突然でびっくりしてしまった。
到着したのが遅く、飲食店もランチ営業がちょうど終わったところだった。「漁師の店こだわり」入りたかったのだが残念!
輪島市内で何度か見かけたこの車。
観光客を無料で乗せてくれるんだそう。地図を広げながらうろうろしている外国人グループなど見つけると、声をかけようかどうしようか、運転手さんがゆっくり後ろを追いかけながら見つめている姿も目にした。
道の駅で定食をいただき、再び先へと進む。
能登半島の道は本当に気持ちがいい。
晴天だったからというのもあるが、海の青さが半端ない。半島の先までが見渡せるのも気持ちいい。
白米千枚田。
「1004余枚の小水田」とツーリングマップルには書かれていたが、本当にこれ、水田なの?階段状に水田が作られている一般的な棚田とは全く別物で、むしろ蒲鉾型に刈り込まれた茶畑のようにも見える。
これで水を張ることができているのだろうか。
不思議だ。
さらに奥へ。
能登半島の中でも輪島あたりから先は「奥能登」と呼ばれる。
このあたりは塩づくりが盛んな場所でもある。
昔ながらの塩田で作った「輪島塩」が買える「塩の駅」。
すぐ脇には塩田も作られ、実際に海水をまく作業が行われていた。塩田の虹。
販売されている輪島塩。
奥の壁に飾られている文字は「塩」の旧字体だ。
そしてたどり着いたのは非常に気になっていた場所、
「せっぷんトンネル」
ツーリングマップルには「接吻トンネル:旧道のトンネルが恋人たちの聖地だというが・・・」と、ここまでの説明で終わっていた。
「聖地だというが」一体どうなのだろう。
ちゃらい感じなのだろうか。いかにも後付けて作られた感満載なのだろうか。
通常は完成したトンネル脇の旧道トンネルは、保守管理もされておらず封鎖されているケースが多いのだが、ここはわざわざピンク色の立て看板まで作られているのだからきっと入ってよく、通れるのだろう。
進んでみた。
え゛っ!?
想像してたのと全然違うんですけど・・・
完全に「今は使われていない崩れ落ちているトンネル」そのものだ。内壁のシールドの鉄板も落ちてしまっていて、昔に掘られた岩が剥き出しになっている。
入口でこんななのだから、トンネル自体は入っちゃいけないんだろうと思ったら・・・
「自己責任で」
の注意書き。
恐らく一度は封鎖のために作られたのだろうゲートは開いており、一応は入れる。自己責任でだが。
お・・・おう。
照明もないので中は真っ暗。
変なものを踏んでパンクしちゃったらどうしよう・・・と不安に思いながらもゆっくり慎重に進んだ。
これ、徒歩の旅行者がスマホの懐中電灯だけで侵入したら結構怖いぞ。
やっと反対側の出口を抜けたら、目の前にもう一つのトンネル。
そしてこちらも真っ暗な中進んだら・・・
Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン
反対側の出口ゲートは閉まっていた。
手動で開けられるんじゃないかと思ってしばし頑張ってみたが、閂はびくともしない。
「自己責任で」より先に「通り抜け出来ません」って表記が必要だったんじゃ・・・。ツーリングマップルに落ちが書いていなかった理由もよくわかった。
「で、どのあたりが接吻?」
という話なんだけど、多分初々しい中高生カップルが「凄いとこあるんだぜ」って訪れて初キッスするとこなんでろうなと、おばさんの勝手な妄想。
だってここ、徒歩で歩いてきたら怖いよ。
絶対にぎゅっと手を繋いじゃうって。
もう一か所、塩がテーマの道の駅があった。
昔ながらの揚浜塩田がある。
観光客向けなどに、ごく一部だけ昔ながらの塩田を復活させて塩づくりをしている場所というのは他にもあるが、このあたりは本当に産業として手作りで塩を作っているようで、この後も道沿いにこんな感じの塩田がいくつもあって驚かされた。
高い木が少なく、緑のじゅうたんのような柔らかさも感じる斜面。ふと北海道の西側をツーリングしている時の風景を思い出したりした。
島根半島の日本海側の道も非常によかったが、奥能登も一発で好きになってしまった。ここはまた、別の季節に訪れてみたい。
先端のほうまで行くとこんな高台から海岸線を見渡せる展望台も。
この奥能登、まだ若かりし頃にサークル同期と一緒に来たことがあるのだが、バス停を見て懐かしい記憶がよみがえってきた。
それは大学一年か二年の時。
どちらも必死にバイトしてお金貯めていた一人暮らし学生だったので、おそらく青春18きっぷとバスで。美味しい海鮮を食べようと行っても高い観光客向けの店など入れず、市場で買ってきたエビと牡蠣を民宿で食べるのに「醤油が必要だ!」となり、お弁当屋さんで白米を二人分買って醤油をつけてもらった。
どんな話をしていたのかも覚えちゃいないけど、時々記憶の片隅にある風景が蘇ってくる。
奥能登もその時、路線バスに乗って回った。
バスの本数は限られており、一時間に一本あるかどうか。
「次のバスが来るまでに次のバス停まで行けるよ。せっかくだから歩いちゃおう」
そう言って、歩き出して次のバス停に。さらにもうひとつ先へ、先へ・・・と、まわりの風景を見たり、たわいもない話をし、笑いながら道を上り下りしていた時のこと。
車も滅多に走っていない道だったが、大きな音に気付いて振り返るとそこにはバス。「ああっ!」と慌てたものの、当時は手を挙げてバスを停めようとする図々しさもなく。
呆然とする二人をバスは無情にも追越し、そして消えていった。
そこから、かなり無言に近い状態で歩いていったような記憶がある。
でもそれ以外はほとんど覚えていないんだけどね。この絶景も。
不思議なかかし群。
珠洲岬にある「ランプの宿」。
この湾内のわずかな平地部分にびっしり建ちならぶ建物すべてがおそらく旅館の建物だと思う。
大学時代、同じ場所からここを見下ろした記憶がある。
大人になったら泊まりたい、そんな話もしたような。
奥能登を満喫しすぎてしまい、またしても「日没までにチェックイン」ルールを破ってしまった。これが二回目。
燃えるような夕焼け。
そんな暇があったら早く先を急がないとと思いつつ、あまりに見事な空の色についついバイクを停めて写真を撮ってしまった。
能登半島の夜道を走るのは怖そうだぞと重々承知していたのに。
実際・・・ちょっと怖かった。
幸い、後ろにも前にも車はほとんどおらずマイペースで走れたけど。
見附島。
そして真っ暗な中を走り続け辿り着いたのが、九十九湾で目の前が海という場所に建つ能登漁火ユースホステル。
ほんわかした素敵な女性スタッフが、温かく迎えてくれた。
彼女ももともとバイク旅をしていた人で乗っていたのはドラッグスター。全国ユース旅をしていた話、新潟のユースのご飯が最高に美味しかった思い出、短期のつもりでここにヘルパーとして入り、早うん年というエピソードなどしてくれた。
ちなみにこのユースホステル。
オーナーさんが漁師で、建物の目の前に停泊した船で毎朝漁に。そして収穫した魚が宿泊者の晩御飯になるのだという。
部屋の名前はすべてイカの名前。
ユース料金なのに、お部屋もひとりで独占利用。
さらに時間に間に合わないので夕食抜きにしてもらっていたのに、食堂でカップ麺食べてたら「かわいそうすぎる、なんかつまみ出してあげてくれ」とオーナーがヘルパーさんの女性に言って、出てきたのがこれ。
アワビは宿泊していた埼玉からのご一家が採って持ち込んだものだそう。
カボチャも最高に美味しい。能登半島の名産「能登カボチャ」だそう。
さらに道の駅で買ってきたキュウリを食べようとしたら「美味しい漬物作ったから」とキュウリとイカの甘酢漬けが。
いやー、ありがたすぎる。
こんなユースホステルの独特の雰囲気って、本当に好き。