【12日目】南三重ツーリングガイドは役立つ!郷土料理「あぶり」に奇岩地形
テント泊の朝はすがすがしい。
林間サイトは自分以外誰もいなかったこともあり、静かで朝までしっかり寝ることもできた。夜中に雨が降っていたようだが、起きた時にはフライシートも乾いていた。
朝食バイキング付きのホテルなども泊まっていないため、どうしても不足しがちなのが野菜。そんなわけで意識して食べるようにしているのが、スーパーやコンビニで販売している袋入りの「洗わず使えるカットサラダ」だ。
これにシーチキンを1缶まるごと突っ込んで混ぜて食べたり、コンビニの別売りドレッシングをかけたり。
コンビニのプラカップ入りの野菜サラダより量も多いしリーズナブル。袋からもりもり食べている姿は女性としてどうよという気はしつつ。
目の前が渓流で、子供たちを安心して水遊びさせられるというのがこのキャンプ場の売り。確かにこんな環境は貴重だ。
キャンプ場としては少々高めなのだが(林間サイトで1人宿泊だと約2500円になってしまう)、家族で来ているグループを見ていると、子供たちが本当に楽しそうに駆け回っている。
子供用のライフジャケットなども管理棟でレンタルしている。
そんなわけで私もせっかくなので川に入ってみた。
朝方なこともあり、泳ぐには水温低すぎるが、流れる川の水はひんやりして本当に気持ちがいいものだ。
ちなみにすぐ近くに国道の橋が見える。
自分もあの道から入ってきたのだが、向かって川の左側(キャンプ場があるほうの川岸)側には国道とつながってみる道がないため、反対側の川岸沿いの道を入る。そしてかなり上流のほうをぐるっと回り込まないと橋がない。
そんなわけで、Googleマップが「到着しました」と教えてくれてから先が長かったこと長かったこと。
500円でレンタルしたハンモック。
前日はテント設営したり選択したりしてるうちに日が暮れてしまい、あまり活用できていなかったので、テント撤収前にしばしまどろもうか。
・・・と思ったところ。
ごろり横になって数分後、ぽつぽつと雨が降りだしてしまった。
なんてこったい。
テントを濡らしてしまっては後で干さないといけなくなるので大慌てでの撤収作業。
ハンモックがとても気持ちいいことはわかったので、いつかのんびりキャンプする時には自前で持参したいと思う。
今日のツーリングの参考にするのは、三重県南部のツーリング情報誌。あちこちで無料で配布されており、私は四日市市の2りんかんでもらった。
もともと存在は知っていたのだが、持参した関東・甲信越のツーリングまっぷるのちょうど範囲外になるところだったのでタイミングがいい。
しかもまさに自分が必要な「沿岸情報」なのだ。
(単に三重県の南部が海沿いに細いというだけなんだけど)
提案しているルートも、観光地から観光地という点を結ぶようなものではなく、ツーリング専門の情報誌なだけあって途中の風景を楽しむ「線」のもの。
本当に役立った。
今回はまったく踏み込むこともなかったが、このあたりからは「熊野古道」の看板もよく見かけるようになった。実は少し前まで、熊野古道は紀伊半島の内陸部の道だと思っていたけど、実は違った。
伊勢から熊野本宮に向かう伊勢路は大半が沿岸だ。といっても、海沿いまで山がせり出している地形なので、峠も多いアップダウン道なんだけど。
実はここ数年ツーリングメインだが、もともと東海道53次ウォークなんかもやっていて、徒歩旅も大好き。足腰が弱る前に熊野も歩いてみたい。
三重南部もかなり入り組んだリアス式海岸。
海の色もまるで山の中の湖のように、濃い緑色に染まっている。
船の引き浪以外は鏡面のように真っ平な穏やかな入り江には、養殖いかだもたくさん浮かんでいる。何を育てているんだろう。
道もカーブだらけで、なかなか落ち着いて風景眺めることもできないので、たまに駐車できるスペースがあるとバイクを停めて一休み。
こんなところでやる人いるの???
「とびだし注意」の看板も多い。
細くてカーブで見通しの悪い道も多いので、結構深刻なのかもしれない。海側には入り江のカーブに沿って防潮堤も作られているので、そこを走る時もまったく先が見えなくなり、注意が必要だ。
ちなみに「とびだし注意」看板は他に女の子バージョンもある。
注意というより、「レッツ飛び出し!」的な明るさなのが少々気になるが。
もうひとつ。
漁港なのだが、ダイビング拠点でもあるらしいところが結構あった。
黒いウェットスーツに身を包んでいる集団がいるのですぐわかる。岸壁沿いにタンクが並べられていたりするところも。
関東でも伊豆がダイビング人気スポットであるように、紀伊半島は関西の都市部の人がダイビングに訪れる場所なのだろうか。
そしてまずは、三重県南部のツーリング情報誌で紹介されていたここに。
場所は「梶賀」という入り江の小さな集落。
ここに代々受け継がれてきた伝統製法の「あぶり」という小魚を燻製したものがあり、それを食べさせてくれる古民家レストラン「梶賀 網元ノ家」があると紹介されていた。
しかもそのお店は、金曜日と土曜日の11時から16時までしか営業しないという。
グッドタイミング!!!
そしてちゃんと営業中の看板。
失礼ながら小さな漁港の真ん中にあるとは思えないスタイリッシュなところ。
中もとってもお洒落。
ちょうど女性ふたりのお客さんが出てきたところで、他のお客さんは誰もいなかった。
入り口すぐ横では「あぶり」をレトルトパックにしたものが販売されている。
家具もレトロ。
和室3部屋をつなげたお座敷にはテーブル3つ。かなり贅沢な空間利用だ。
金土以外はコミュニティスペースか何かなのだろうか。
この「あぶり」は、街おこしの一環として外部へのアピールを図っているところらしい。
その手間のかかる作り方などがパネル展示されていた。
小魚もすべて手作業ではらわたなどをとる、そこが一番大変らしい。
メニューはこれだけ。
若い男女スタッフがいて、聞いたところ、あぶり初体験なら「梶賀のあぶりと餅茶セット」がおススメだろうと。
あぶり釜飯もセットもどちらも注文受けてからご飯を釜炊きするので30分はかかるとのこと。
待っている間に置かれている観光パンフレットなど見させてもらう。
ここも、昔は伝統的なクジラ漁が行われていたそう。
その時の風習で今も1月中旬に「ハラソ祭り」が行われる。
そして運ばれてきた!!!
魚はぶりとサバの子供の「小鯖」。
ご飯の上には焼いた丸い餅が乗っており、ご飯も釜炊きしたものでおこげがちょっとある。
ポットのお茶も出され、ご飯にはそれをかけていただくのだという。
正直、お茶かけて食べてしまうなら、30分もかけて釜で一人分ずつ炊かなくても電子炊飯器のごはんでいいんじゃないかなと少し思いつつ、でも美味しかったのでよし。
そしてメインはこちら。
一口かじった瞬間に口の中に広がる燻製の香と濃厚な味。
なにこれ、めちゃめちゃ美味しい!!!
なまり節に近いのだろうが、それともまた違う。
そもそも、こんなに小さな魚の燻製を食べるのは初めてだ。
小鯖のほうも、見た目は小さくて硬い干物のように見えるが全然違う。ふんわり柔らかく、骨も含めほろほろと崩れるように食べられる。
でもやはり一番おいしかったのはぶり。
ぶり自体がとても美味しいものを使っているのだろう、脂たっぷり、燻製臭もたっぷり。もったいなくて、ちょっとずつちょっとずつ惜しみながらかじった程だ。
いやー、美味しかった!
30分待ってでも食べる価値あり。
そして実は料理を待っている間、「バケツをひっくり返したよう」という表現がぴたりあうような豪雨だったのだが、出てきた時には晴れ上がっていた。
しかも気温急上昇しているらしく、蒸し蒸し。
そこから少し走って柱状節理の奇岩地形が見れるという「楯が崎」へ。駐車場があったのでそこでバイクを停め・・・
「一体どこにあるんだ?全然見えないぞ?」
と軽く首を傾げながら・・・
遊歩道入り口を入っていったのが運の尽き。
今思えば、この段階でもう一度三重南部のツーリング情報誌を読み直すか、位置をググっておけばよかったのだ。
延々続く下り階段。
5分もすれば、楯が崎が見渡せるスポットに出るのだろうと思っていたが、それどころか駐車場に何台か止めてあった車やバイクの人たちが戻ってくる気配もない。先も見えない。
「でもここまで来ちゃったし、無駄に登って戻るのは悔しいし」
なんて思いながら10分程歩いたところで、まだ1.4キロ先との看板。
うーむ。時速4.5キロとして20分くらいか。
この時はそう考えたのだが、実際はかなりのアップダウン道。実際には30分以上かかったと思う。
もはや気分は熊野古道ウォーク。
歩くのは好きだが、そもそもツーリング途中でそれほど歩くつもりがなかったし、プロテクター入りの厚手デニムにジャケットを着こんでいて、汗だらだら。
さすがにジャケットは途中で脱いだが。
そして下りきったところは、道が通じていない小さな桟橋がある入り江。
海の色がきれいだ。
つか、相当高いところから降りてきたぞ。
またここを上って駐車場まで戻らないといけないのか・・・
しかもまだ1キロ近くある。
途中で、おそらく駐車場で隣に停まっていたバイクの持ち主らしい男性ともすれ違った(自分同様あきらかに山歩きの服装ではなく厚着だったので)。
「結構遠いですよね、どうでした?」
「・・・帰りがしんどい」
汗だくのその男性は、にこりともせず身もふたもない返答。でも確かにそうだよなあ。帰途のことは途中から考えないようにしてきたのだが、こちらまでどんよりしてきた。
下りきったのに、ここからまた登り道に。
そして遂に見えてきた!!!
柱状節理!
これは展望台と名付けられていたスポットからの写真。
そこから下ると、千畳敷という開けた場所にでてくる。
ここも下は同じような柱状節理なのだろう。
遊歩道の入り口からここまで45分。
ランチタイムも一時間とってしまったので、今日のツーリング行程は大幅に短縮せざるを得ないけど、まあこの風景に立てたのだからいいとする。
(本音としては、ここまで山道歩いて見に来るなら絵葉書でいいやと思いつつ)
ちなみに上のセルフタイマー写真を撮ろうとして、うっかり岩場に手を付いたところ、そこに生えていたこの大きな棘をもつイバラのような植物が左手の指にぐっさり。
見事に何か所も刺してしまい、しばらく止まらなくなるほどの大出血。その後もしばらく指先の感覚なくなるほどだった。
疲れている時ほど慎重に動かないとなと大反省。
神武天皇上陸之聖跡碑。
自分も海からがよかったな~。
ふたたび40分くらいかけて駐車場まで戻った時には、Tシャツもぐっしょり。シャワー浴びた直後のように髪もびっしょり。
ツーリング情報誌を改めて読んだら「このスポットだけで2時間程度は費やすことになるし、普通のツーリングではまず訪れないところかもしれない」なんて書いてある。
どうしてここを読み落としたかな~。
体力消耗しすぎたが、気を取り直してツーリング再開。無理はせず、暗くなる前にチェックインできるところに宿をとることにした。
もう一か所の奇岩スポットは「鬼が城」。
こちらは駐車場から歩いてすぐなのでうれしい。
実はまだ先も長い遊歩道があったのだが、最初に見えたここだけで満足して引き返すことに。
大根おろしになりそうな岩。
実はこのスポット、「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成要素として世界遺産に登録されている。
そんな世界遺産で釣りしてる人も。
獅子巌に至っては、もはやバイクから降りるのも億劫で、駐車場から撮影。
確かに吠えているライオンの横顔に見える。
そして新宮市内の本屋さんでツーリングまっぷる関西版をゲット。
こちらにもしっかり浜名湖以西の地図があった。つまり浜松のイオンにこれがあれば「中部版」は買わなくて済んだのだ。
次からはちゃんと、全行程分の地図をそろえて必要な個所だけカットして持参するようにしよう。
「今さら紙の地図?」
と驚かれるが、展望のいい道からさまざまな注意事項まで事細かく買い込まれたこの地図、ライダーには必須なので。
そして書店の前からすぐ近くの宿も予約した。
レトロなビジネスホテル。
キャンプ場からの走行距離はわずか93キロだったが、「あぶり」と柱状節理への遊歩道でかなり時間を使ってしまったので仕方ない。
そんな日もあるさ。