【4日目】石垣の郷、遊子水荷浦の段畑、西予の海沿い絶景ルート
昨夜は宿毛に泊まる予定が、高知・愛媛県の県境を越えて御荘(みしょう)まで来てしまったので、今日はココからスタート。アメーバのように広がる複雑な形をした船越半島・西海半島の付け根にある街で、昨夜着いてびっくり。
主要道路は複数車線でとっても広いわ、大きなお店もたくさんあるわでかなり大きな街だった(地名の読み方すら知らなかったのに・・・)。
そして天気予報では台風の影響で今日からしばらく雨。スマホアプリの警報によると夜間に大雨も降ったらしいんだけど、幸い朝にはあがっており、雲はちと怪しいが隙間から青空も見える。
▼四国・瀬戸内海沿岸ツーリング4日目動画(10分59秒)
そんなわけで大急ぎで身支度し、半島に続くきれいな道・西海道路を走ってまず訪れたのが「紫電改展示室」。ツーリングマップルによると「久良湾の海底から引き揚げられた旧日本海軍戦闘機紫電改を展示」とのこと。
一帯が公園になっている見晴らしのいい高台に建つ新しい建物だ。
外でタバコを吸っていた男性がここのスタッフらしく、いらっしゃいませと挨拶された。入場料などもなく自由に入れる。
中はこんな感じで、中央に紫電改が鎮座し、その周囲にパネルや部品、関連する資料などがぐるっと展示されている。先客がひとりいた。
34年間海底40mで眠っていた機体だが、ほぼ完全な姿で残っている。
紫電改は、太平洋戦争中盤以降に、それまでの主力戦闘機だった零式に替わる局地戦闘機として登場したもの。終戦までに400機が生産され、ここに展示されているのがそのうちの1機だ。
●日本に唯一現存する戦闘機「紫電改」は愛媛県愛南町にあり | 愛媛県 | LINEトラベルjp 旅行ガイド
なぜ紫電「改」なのかという説明もあった。
昭和17年に「紫電」の試作機が作られたものの、エンジントラブルなど相次ぎ、離発着時の事故が多発。それでも翌年18年に量産体制に入り19年に正式採用されたが相変わらずの故障。
そんな中、胴体部分を再設計し、部品点数も大幅に削減して紫電の欠点を一掃した戦闘機が新たに作られ、「紫電改」と名付けられたのだという。正式採用されたのは昭和20年1月で海軍最強の戦闘機。終戦まで半年ちょっとと非常に短い期間ではあるが、本土決戦の局面で活躍した戦闘機だ。
そんな短い歴史だったこともあり、現存するのはここにあるのが唯一。
昭和20年7月24日に大村基地を飛び立って豊後水道上空で米軍機と交戦した6機のうちの1機とみられ、その搭乗員たちについての展示パネルもあった。みな20代。あと半月ちょっとで終戦を迎えることができたというのに。
建物を出て宇和海展望タワーを見ると、見事な青空が広がっていた。
やった!
このエリアは牡蠣でも有名なところのようだが、高台から見下ろすと湾内には牡蠣養殖と思われるイカダがぎっしり。リアス式海岸の入り江では他に、真珠母貝やタイ、ハマチなどの養殖も行われているそう。
あやまってシャッター切ってしまっていた一枚だが、巨大台風接近中とは思えない青空が垣間見える。
そこから半島の海沿いのくねくね道を走って向かったのが「石垣の里」外泊。
石垣集落があるというのだ。
沖縄みたいな感じ?
・・・と思ったら全然違った!!!
かなり急な斜面に、まさに段々畑のように石垣が作られそこに家がびっしり。石垣と石垣の間にも石を敷き詰めた細い道が作られ、急な場所は階段が設置され、その路地がどこまでも続く。かなり広いエリアがすべてこの状態なのだ。
何もここまで苦労して家を建てなくても・・・と思ったけど、平らな土地が極めて限られたこの半島で、次男以下が新たに家を建てようとするとこういった土地しかもう残っていなかったのだとか。まるで城かと思うほどの立派な石垣。訪れて実際に見てみる価値ありだ。
中には旅館やお食事処もあるので、時間があれば泊まってみるのもいいだろう。
自分ももっと早い時間に到着していたら、御荘市街地ではなくここに泊まってみたかった。
問題はこの後。
外泊を出てさらに半島外周の道を南下したのだが、かなりのアップダウン&くねくね道。外泊から先は集落がないこともあり、また前夜の大雨で大量の葉が落ち、道路を埋め尽くしていた。滑るんじゃないかとおっかなびっくりでスピードもだせない。
その後、唯一すれ違った森林管理の車を見送った直後、
スコールのような大雨
に見舞われ慌ててカッパを着込む。道路を雨水が勢いよく流れ始めますます危険な状態に。怖いよ~。
でも幸い、高茂岬に到着した頃には雨も止んだ。
・・・のだが!!!
今度は暴風にさらされることに。
一時期は本当に強く吹き、遮るものもない高台で停めていたバイクが倒されそうになるほど。左右両方にサイドスタンドを付けておいてよかった。こういう時に風向き次第で切り替えられるので(センタースタンドは荷物満載の時に建てようとするとギックリ腰発症する危険性あるので慎重)。
なかなか風がやまない中、悩んだ。
今来た半島の西側の道へ戻るべきか、それとも東側に進むべきか。風は東から吹いているので戻れば強風には晒されない。ただ雨の後にあの落ち葉だらけのアップダウン道を走るのは避けたいところ。
悩んだ末、まだ走っていない東側に向かうことにした。
ツーリングマップルには「ゆっくりと狭い断崖を走る 海の景色が美しい」「サルに会えるかも」とあった。
結果は正解。
風遮るものが一切ない高い場所を走ったのは岬からちょっとの間だけで、すぐに下りはじめ、その後はいくつかの集落を通りながら、走りやすいきれいな道となった。そして穏やかな入り江。雨も風もやんだ。
そして御宿市街地まで戻り、ガソリンを満タンにしてから今度は宿毛街道を北上。
道の脇にミカン畑が広がり始めた。
この海沿いルートは本当に気持ちがよかった。
車ともバイクともほとんどすれ違うことのない道。
入り江の海の色の美しい事ったら!
夏だったらこのままバイクをどこかに停めて、裸足で入りたくなる。
入り江ごとに小さな漁港が作られているのだが、船ごとに浮桟橋が作られていて、さらには屋根付きの作業小屋もしくは道具小屋のようなものが大きめの浮桟橋に設置されているものも多かった。台風が来たらひっくり返っちゃったりとかしないのだろうか。
この日のハイライトは遊子水荷浦の段畑だ。
段々畑のことをこのあたりでは「段畑」と呼ぶ。
今シーズンの収穫は既に終わっており一面の茶色だったが・・・
その規模は予想以上!
この段畑は400年くらい前からあるものだそうで、急斜面に石を積み上げて畑を作っている。2007年に「重要文化的景観」として選定を受け、NPO法人がこの景観維持のための活動をしているのだそう。
その手前にある「だんだん茶屋」は残念ながら空いていなかった。土日祝日のみだそう。その奥の売店でアイスを買いがてら質問したら、段畑は登ってもOKとのことなので、駐車場にバイクを残したままあがってみることに。
と、収穫の時などに使うレールとラックを修理している男性がいた。
ミカン畑でよく見かけるものだが、この段畑でも必須なのだそう。
何を作っているのか聞いてみると「じゃがいも」。
「ここのじゃがいもは本当に美味しいから!通販でも買えるよ」とのこと。バイクで回っている話、段々畑のことなどしばし歓談。
弧を描いて伸びる段畑はまるで
円形劇場のよう。
上のほうを見上げると、少し腰がまがった高齢の女性がひょこひょこと畑の間の階段を歩いていた。すごいなあ、毎日こんなところを上り下りしていたら、かなり足腰も鍛えられることだろう。
下を見下ろすと水が浦の漁港。
さきほどの男性によると、いろいろな魚を養殖しており、じゃがいもも美味しいけど魚も絶品だとのこと。駐車場にはぽつんと赤いクロスカブ。
今は段畑観光のシーズンオフなのか、長時間滞在したが自分以外の観光客に出会うことはなかった。
今回はミニ三脚を持参したので、自撮りなども。
自分のまわりのブロガーの間では、あえてカメラ目線にしないで自分自身を風景に紛れ込ませて撮る「ほんまちゃん撮り」がここ数年流行っているので真似してみたのだが・・・なかなか自然体って難しい。
そもそも撮ってる状況そのものがすごく不自然だ(笑)
そこから宇和島へ。
天守が残っており重要文化財にも指定されている宇和島城があるので見てこようかと思ったが、入り口からかなり歩かないといけないらしく、時間もかなり遅かったので今回は断念。いろいろ凝った築城術が駆使されたところのようだ。
国道378号線を走って西予へ。
このあたりにくると、斜面はびっしりミカン畑となる。
愛媛県西予市は、7月の大豪雨で甚大な被害を受けたエリアのひとつだが、ダム放水で川が決壊し広範囲で床上浸水した他、斜面のミカン畑が崩れてしまったところも多かったのだとか。ちょうど3か月が経過したタイミングなこともあり、地元テレビでは連日、復興に取り組む住民や農家の人達の姿が取り上げられていた。
●愛媛・豪雨災害(西日本豪雨)|災害・防災|LIFE|愛媛新聞ONLINE
甚大な被害となったのは、内陸のダムのすぐ下流にある町だが、海沿いでも数多くの土砂崩れが見られた。
ここも平らな土地はほとんどなく、入り江の港のまわりにだけ小さな集落が作られ、あとはずっと山と海が隣り合わせでその間を道路が走る。
その道路から上の斜面だけでなく、海へと落ちてゆく下の斜面にもびっしりミカン畑。
すごすぎる!!!
これ考えたら千葉県なんて、土地の使い方が本当に贅沢だよなあと。
再度のほんまちゃん撮り。
地面に置いたヘルメットにスマホを立てかけてタイマー撮りしてみた。
西予市の西端の国道はこんな道。
ツーリングマップルには「高さ数十メートルの絶壁の一枚岩の下を走る」「海が好きなライダーにはおススメの探勝ルート」「ブラインドコーナー多い スピードは控えめに!」と書かれているが、確かに走っていてゾクゾクする道。
時間さえあれば、何往復もしたくなるほど。
もっと明るい時間帯に到達しておくべきだった。
最後はほぼ真っ暗な中を走り、湾内の一番奥にある町・三瓶(みかめ)にあるホテルみかめ本館に辿り着いた。なぜこんな場所にこんな大きなホテルが?と不思議なほどの立派な建物だが、観光客とビジネス客半々くらいとのこと。スタッフも元気で明るくフレンドリー。
しかも最上階には大浴場も。
一日雨天覚悟で起きたものの、蓋を開けてみれば雨に降られたのは数回程度(豪雨・暴風体験はしたけど)。見所の石垣・段畑・西予の絶景ルートは青空にも恵まれラッキーな一日だった。
>5日目「暴風の佐田岬半島を泣く泣く断念・・・道後温泉は大賑わい」に続く
▼四国・瀬戸内海沿岸ツーリング4日目動画(10分59秒)
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