房総半島素掘りトンネルナビ
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房総半島に数多く残る「素掘りトンネル」。林道にひっそり佇むトンネルはまるで別世界へといざなう入り口のよう。素朴なトンネルの内壁には美しい地層も浮かび上がり、ツーリング目的地としても人気です。主要な素掘りトンネルへの行き方やおススメルートなどをご紹介します。

オレンジ色に輝くくねくね蛇行トンネル

奥米隧道(奥米トンネル)

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三島ダム・三島湖の南側の川が複雑に蛇行するエリアにある、かなりムード満点のトンネル。内壁は既にコンクリ吹付による補強が行われているので素掘りとは言えないが、でこぼこと盛り上がった内壁の凹凸を際立たせる赤みを帯びた照明、くねくねと曲がった長いトンネル、そしてぽっかりと口を開ける横抗。知らずに入り込んでしまったらドギマギすること間違いなしのこのトンネルは一見の価値あり。

林道ではなく、国道410号と並行して走る舗装道路上にあるため、車や大型バイクでも問題なく通ることができる。トンネルは昭和40年代に途中が崩れ、2本にわける工事が行われたとのこと。南側が長く蛇行しており、北側のトンネルの出口を抜けると右手に石井釣舟店があり、その先に赤く塗装された奥米橋がかかっている(昭和28年建造)。2つのトンネルの間には車が停められる広い砂利敷きのスペースがあった。

南側のトンネルには途中2か所横坑があり、ひとつは人がややかがめば入ることはできる。トンネル内に溜まった水を排出するためのもののようで、横坑内には溝があり、少し先から水が溜まっていた。かなり先に屋外からの光が差し込む小さな穴も見えた。

車の通行量は少ないものの、中の見通しが非常に悪いため徒歩の場合は車が近付いてきたら十分に注意しトンネルの死角に立たないようにすること。音がかなり反響する構造で、車が進入してくるとかなり遠くからでも音が響き渡る。

なお、椎名林檎と宮本浩次「獣ゆく細道」MVに登場するトンネルが奥米隧道に似ている。おそらくここがロケ地。

概要

住所千葉県君津市奥米
全長99.7メートル/308.4メートル
建設時期昭和30年
駐車場─(トンネルとトンネルの間の道路脇に広いスペースあり)
トイレ
マップコード309 724 551*02

アクセス

<車・バイクの場合>

国道465号(房総半島南部を横断する道)と国道410号(房総半島中央部を南北に縦断)が交わる場所から近い/2つのトンネルの間に停車可能なスペースあり(駐車可かどうかは未確認)

<公共交通機関の場合>

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動画

▼奥米トンネル─バイク(1分53秒)

訪問レポート

●房総(4/4) 奥米台隧道から奥米隧道|とんちん漢|note

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複雑に蛇行し、湖というよりは「太めの川」的な三島湖の南側にトンネルがある。トンネル入り口には「石井釣船店」があり、上から見下ろすと浮桟橋の両脇にびっしりとボートが並んでいる。

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トンネルの手前には赤く塗られた橋。これが奥米橋で、昭和28年建造と刻まれていた。ちなみに写真奥に写っているのが2連のトンネルのうち北側のトンネル。その手前すぐ左側の建物が石井釣船店。

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まずはひとつめのトンネルの入り口。タイル状のものが嵌め込まれていたようだが、「奥」の文字と「米」の文字の半分が落ちてしまっていた。下には「昭和三十年三月竣功」と書かれている。「竣工じゃないの?」と思ったが、後で調べたところどちらも使うらしい。

●漢字の質問 - 「竣工」と「竣功」の違いについてご存知の方教えていただけますか... - Yahoo!知恵袋

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このトンネル、入り口も左右対称の蒲鉾型で奥に見える出口も同様なので、一瞬「普通のトンネルかな」と思ってしまうが、補強されアーチ型になっているのは入り口と出口部分だけ。

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数メートル進めば、素掘りトンネルの内壁をコンクリ吹付した、でこぼこだらけのトンネルだ。コンクリの状態からして、吹付補強がされたのはそれほど前ではないようだ。

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壁にはチョークでいろいろ書かれている。定期的に検査などが行われているようなので、その書き込みなのかもしれない。

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ひとつめのトンネルを出ると、すぐ先に次のトンネル。その手前の道路右側には斜面、左側には広い空き地がありその先は湖。

もともと一本のトンネルだったのが、斜面崩壊で2つに分かれたのだとか。

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これが2本目、南側のトンネル。同じく入り口はコンクリで固められたアーチ形になっているが・・・

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入ればすぐ、コンクリ吹付しただけの凸凹だらけの内壁トンネル。しかも先程のトンネルと違い、中で道が曲がっており出口はまったく見えず。オレンジ色の照明がなんとも怪しく輝いていて、一瞬奥へと進むのがためらわれるほど。

そして今だから思うのだが、行く前に「心霊スポット」説の記事を読んでいなくてよかった~!

というのも、途中でかなり大きな音と振動が響いてきたのだ。前を見れど後ろを振り返れど何もなく、しばらくそれが続き「もしや上を線路が走っている?なんてはずないよな」とドギマギしていたら、一台の車が通りすぎていった。トンネル構造のせいか、かなり離れていても反響音が非常に大きく聞こえる。

トンネル内は蛇行していて見通しも非常に悪いので、徒歩で入る場合は車が近付いてきたら、運転手からしっかり目視確認できる明るい場所に立ってやり過ごしたほうが安全だ。こんなトンネル内でいきなり人が現れたら、おそらく車側だってびっくりすると思うので。

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入り口から離れるにつれ外光も全く届かなくなり、「黒とオレンジ色」2色の世界。

そして上の写真でお気付きだろうか。トンネルの内壁の左側。

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横坑が!!!

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ライトで照らしてみるとこんな感じ。低いので入っていくことはできないが、かなり奥までありそう。

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その先にさらにもうひとつの横抗。先程のものより高さがあり、大人でもかがめば入って歩いて行けそうな感じ。

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入ってみたい・・・ちょっと怖いけど・・・。 底辺の真ん中に溝のようなものがあり、どうやらトンネル内に入り込んだ水を外に出すための排水溝らしい。

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照らし出してみると奥まで見えた。それほど深くはなさそうだが水が溜まっており、おそらく一番奥に見えているのが出口。光がそれほど差し込んでいないところを見ると、樹々で覆われているのかもしれない。位置関係から考えると、その先は湖のはず。

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そして2つ目の横抗のあたりまでくると、出口が見えてくる。このあたりが最もフォトジェニックな場所だと思う。

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くねくねと蛇行するオレンジ色の道。ひび割れたようなトンネル内壁の模様。天井の照明がいざなう先には出口があるが、外界の光がまぶしすぎて外はまったく見えず。 この場所がおそらく、椎名林檎と宮本浩次の「獣ゆく細道」のミュージックビデオで使われている舞台だ。

●椎名林檎と宮本浩次-獣ゆく細道 - YouTube

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そして遂にたどり着いた出口。ここも補強工事が行われアーチ型のトンネルになっている。かなり長い距離をひとり歩いてきたので、ほっとする瞬間だった。

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南側のトンネルの南側の出口。こちらにはひらがなで「おくごめずいどう」と書かれていた。

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もともと一本の同じトンネルだったのだから当然だが、竣功も昭和三十年三月で一緒。

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記念撮影。

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沁みだした水でボーダー状の模様ができている。見たところ新しそうなのだが、コンクリ裏の防水、大丈夫なんだろうか。

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バイクを2つのトンネルの間に停めてきているので、再びトンネルに入ってゆく。

コンクリ吹付補強されているので、素掘りトンネルという定義からは外れるが、こんなムード満点のトンネルは滅多にない。一度通れば二度と忘れられない風景になる。 車でも問題なく行ける場所なので、話のネタにもなるこの奥米トンネル、ぜひ一度行くことを勧めたい。